斜陰陽

水井の住まいのラコストLacosteの近くに、ボーキュルーズ Vaucluseの泉がある。14世紀にさか のぼる愛の物語が受け継がれている神秘的な泉である。70歳を迎えた水井は、地球における水の サイクルの中で、那智の滝の日本に落ちた水は、地球を貫通してこのフランス/ラコストの神秘の 泉にいたり、沸き出しているに違いないと悟り、日本とフランスはつながっていることを作品 テーマに選んだ。「日本とフランスという 半分半分を生きてきた。二つの道二つの文化を生き るなか、鑿とハンマーをつかった石との対話のなかでまだ到達していない私の仕事。<陰>とい うひとつの道ひとつの文化 <陽>というひとつの道ひとつの文化、それが近づき、一体化して いく仕事。《斜陰陽》Diagonal Yin Yangというこの作品群は ~日本とフランスの生きる~を 陰陽にみたて、自然のなかに陰陽を見出しながら、私自身の陰陽の融合をめざした彫刻家として の、石の上での陰陽の対話である。日本とフランスを半分半生きた私が、その半分半分を融合さ せたところにまだ知らぬ新しい息吹が生まれるであろうという期待をもって取り組んだ。」40点 のシリーズの《斜陰陽》Diagonal Yin Yangの作品群は、大阪辰野ひらのまちギャラリー1995年 (平成7年)の個展として展示された後、フランスにおくられ、水井の住まいであったラコストの 広大な庭に野外展示されている。アンドレ・マルローは、日本に訪問した時、水井の友人である 元筑波大学名誉教授の竹本忠雄にこういっている。「那智の滝は、真実本質的に、日本の神道の 頂点である。」那智の滝とラコストの神秘の泉の繋がりの思いが、陰と陽、自らのなかのフラン スと日本の融合の確信に導いたのである。

彫刻の庭の中へ、、、